赤を追う。

赤い靴下と赤い悪魔を応援しています。 ボストン・レッドソックス/マンチェスター・ユナイテッド

最大のライバルの連勝街道をストップ… 勝てなかったが負けなかった試合。チームに漂うのは期待感か、それとも失望感か

[EPL] 第9節 United 1-1 Liverpool

 

ー「失望している」

    「不十分だった」

    「もっとできた」


1-1のドローで終えた試合後、ユナイテッドの選手たち、そして陣営から出てくる言葉はネガティブなものが多かったように思います。皆さんはどのように感じたでしょうか?相手は、昨季チーム史上最多となる5もの勝ち点を獲得し、プレミアリーグでは目下17連勝中、そして何より、18シーズンでは欧州のチームにおいて最も長くピッチに立っていた選手たちを有するチームです。それを相手にドロー。悪くない結果、そして現実的な結果です。にもかかわらずなぜでしょう。なぜこんなにもモヤモヤした空気感が漂っているのか。答えは簡単で、相手がリヴァプール、そして舞台がオールド・トラフォードだから。宿敵をホームに迎え、最も勝利が求められる試合、そして最も勝利を求める試合です。そんな試合で勝てなかった、でも負けなかった。複雑な感情を残して終了した伝統の一戦・第1ラウンド。まずは振り返っていきます。

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出場が危ぶまれたデヘアは先発、そして復帰したマルシャルがベンチに入りました。ポグバ、ショー、マティッチを怪我で欠くユナイテッドは、3-5-2のシステムを採用。リンデロフ、マグワイア、トゥアンゼベ…に代わって入ったロホがセンターバック。ワイドにワンビサカ、ヤング。フレッジ、マクトミネイの中盤。2列目にペレイラ。前線にラッシュフォード、ジェームス。レスター戦のあとラッシュフォードを使うなら2トップと書いてましたが、まさか相方がジェームスで実現するとは、でした。リヴァプールはサラーが欠場、アリソンが復帰。

 


戦評

試合の入り、主導権を握ったのは急造システムがハマったユナイテッド。ワイドに入ったワンビサカを中心にサイドの数的優位を生かした攻撃を展開し、1点モノのクロスが入るシーンを作ります。ハイプレスも効果的で、高い位置でのボール奪取からペレイラ、マクトミネイがフィニッシュまで行く場面もありました。この場面でも絞ったサイドバックの奥にワイドのワンビサカがフリーで待ってたりもしたので、攻撃の形としては上々。ただシステムに全く慣れてないのでそこを使う余裕がない。

また、バックラインからのビルドアップでも、いつもは出しどころがなくてサイドバックに預ける、スペースがなくて詰まる、ロングボールでロストor当ててスローイン、というところを、ぽっかりとポケットになるワイドのワンビサカに逃げることができていました。バックスの数がシンプルに多いので作り直す時にはパスコースが増えますよね。インナーラップしたサイドバックを組み立てに参加させるペップ流は合理的なんです。

一方、ユナイテッドの高いテンションと圧力に押されていたリヴァプールショートカウンターからマネを走らせてフィルミーノの決定機を演出。左右への揺さぶりでスペースを作り、ワイナルダムのミドルシュート。徐々にペースを掴み、緊張感のある展開が前半の終盤まで続きました。そんな中、突如ユナイテッドが得意のショートカウンターを発動させます。リンデロフのボール奪取からマクトミネイが素早くつなぎ、スピードに乗ったジェームスが送った質の高いクロスにラッシュフォードが合わせて先制。さすがの速さ、そして驚いたのはラッシュフォードの動き。ニアへの動きをダミーに使いマティプの裏を取る。ストライカーかよ。このままリードでハーフタイム。


後半、点が欲しいリヴァプールは攻勢に出ます。リヴァプールの強みは、3トップの連携から成る攻撃が完結するスピード、中盤の構成力、ファンダイク、そして両サイドバックの高性能クロス、いわゆる飛び道具。正直、運べて散らせる中盤の両脇にアシストマシーンを置かれると、抑え切るのはほぼ不可能です。左右に振られればいつかは必ずギャップができるので、守備側の中盤は素早いスライドを求められますし、サイドバックは絞らなければいけません。どれだけ完璧にやったとしても、逆側のサイドバックやら中盤までもがボックス内に入ってくるチームですから、やっぱり不可能。それこそモウリーニョを呼ぶしかありません。そりゃバルサも4点取られますよと。

そういう意味では、ユナイテッドの守備陣はかなり頑張っていました。中盤のコンビの中で実は1番相性良い説もあるフレッジとマクトミネイは、ペレイラと共に豊富な運動量で相手を制限。プレスに行くところと行かないところの判断も◎。そしてワイドのワンビサカとヤングは相手の両サイドバック、アーノルドとロバートソンに睨みをきかせます。スールシャールがこれを意図して5-3-2を採用したのかは分かりませんが、攻守両面でシステムが効いていました。効果的なクロスが入らないのでオリギが生きず、個で打開できるサラー不在が響いた印象。

時折カウンターで追加点を狙いながら、ユナイテッドが耐える展開、違いを生んだのは選手交代でした。クロップはオリギを諦めてチェンバレンを投入。システムを4-2-3-1に変更し、サイドの数的不利を解消。さらにケイタ、ララーナを入れ、2列目にフィルミーノを降ろすことで中盤の枚数と運動量を増やします。失点シーンは、チェンバレンペレイラを引きつけ、空いたスペースへと入ってきたロバートソンがクロス、ボックス内に侵入していたララーナのゴール。ロバートソンへパスを出したのも余ったケイタからです。クリアできるクロスでしたが、フィルミーノのフリックも効いて通してしまいました。集中が切れたと言えばそれまでですが、きっかけを作ったクロップを褒めるべきかと。

最終スタッツです。

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さて、この引き分けで直近6試合勝利なしとなりました(PK含まない)。リヴァプールを相手にした試合は、いつの時代においても「絶対に勝たなければいけない試合」だったはずです。そんな相手をホームに迎えた試合で、勝ちきれなかったという結果に対して失望している人も多いでしょう。しかし同時に、今やチームとしてのピーク、目指してきた1つのスタイルを確立し、黄金期を迎えているリヴァプール。そんなチームを相手にして、引き分けという結果にどこか満足感を得てしまう人、または満足感を得ざるを得ないこのチーム状況に対して虚無感を覚える人も多いでしょう。そんな色々な感情が入り混じりに入り混じったモノこそが、今のマンチェスター・ユナイテッドを取り巻くモヤモヤした空気感の正体です。でも、私はこの空気感、正直嫌いじゃないんです。ビッグクラブの病気は、ビッグクラブにしか治せません。こんな空気感は、歴史的に停滞している今シーズンにおいて一度もありませんでした。めちゃくちゃ勝ちたかった、でも勝てなかった。試合結果を変えることはできません。ではこの悔しさをどこにぶつければいいのか。長いシーズン、試合はまだまだ続きます。まずは今日、パルチザン戦。モヤモヤがモチベーションへと姿を変えていることを願ってます。それでは。